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乳之書
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自業自得のボリューム・インフレーション
 たとえば、今、マンガの単行本は1冊あたりだいたい200頁ぐらいで360円前後で売られている。ところが、倍のボリューム、すなわち1冊あたり400頁のボリュームでお値段据え置きのまま出したところ、そのタイトルが空前の1000万部のセールスをあげてしまったとする。すわっ、うちも! と他の出版社もみんなお値段据え置きのまま頁を倍増してしまった。
 経営者として、あなたならどう思うだろうか? 賢明なことよと思うだろうか? それによって、ごく一部のタイトル──わずか1、2タイトル──はバカ売れするかもしれないが、他のタイトルの売り上げは変わらぬとしても、賢明よと思うだろうか?
 恐らく思わぬだろう。
 では、ユーザーのニーズが、もう少し1冊あたりのボリュームを求めていたとしても、それに応じることによって、書き手の資金状態を悪化させ、結果としていいものを生み出す環境を損なってしまうとしたら?
 恐らく、あなたはボリュームアップの戦術はとるまい。だが、わざわざ自分の首を絞めるような選択をとっている業界がある。
 エロゲー業界である。
 価格はそのままにしておきながらボリュームを倍増どころか数倍あげているのだ。あなたはそれを賢明と思うだろうか?
 ある者は言う。それはユーザーのニーズだから仕方ない。
 本当にそうなのか?
 そのように誘導してしまったものが、ユーザー以外にいたとしたら? そちらの方が影響力が大きかったとしたら?
 DOSの頃も、桁違いのボリュームのソフトを出すソフトハウスはあった。エルフなど数社である。特に『同級生』シリーズのボリュームは、当時のソフトの中では群を抜いていた。
 けれども、「エルフがやっているから、おれも……」と追随するところはなかった。自らの資金力を省みずにいたずらにボリュームを増やすということはなかった。もちろん、フロッピーディスクベースという構造的な問題もあったのだろうが、自分たちは自分たちのスタンスで動いていた。自分の資金力を知って動いていたように思う。資金力のないソフトハウスは資金力のある大手の真似をせず、数社だけが驚異的なボリュームを誇るという状況が保たれていた。そのため、その頃のボリュームの業界平均値はそれほと高くはならなかった。
 結果、ユーザー側も、エルフ以外のソフトを購入してボリュームに対してブーイングをするという状況は生まれなかった。ユーザー側も、その数社だけは特別だと思っていたからだろう。作り手の資金状態が悪化し、いいものを生み出す環境が損なわれるという状況は、当時、あまりなかったように思う。
 ところが、『Air』-『君が望む永遠』のストリームの中で、真似をしなくてもいい規模のソフトハウスまでもが、資金力のあるソフトハウスの真似をしてしまった。猫も杓子も状態になってしまった。結果、1本あたりのコストは上がる。だが、1本あたりの売れ行きはあがらない。あがらないから、短期間でソフトをつくるしかない。それも、膨大なボリュームのゲームをだ。短期間で大容量をつくろうとすれば、自ずとやっつけ仕事になる。商品のクオリティは、自ずと下がる。テキストも悪化する。シナリオも悪化する。まともにデバッグする時間もとれない。とるような資金力はない。
 わずか数社の大手の真似をする必要はなかった。真似をせず、自分たちは自分たちのボリュームレベルで戦っていればよかったのだ。ところが、自分たちの資金力を超えて、ボリュームをあげすぎてしまった。結果、資金状態を悪化させ、まともなものづくりすら危うくなる状況が生まれている。クオリティの低さは資金力だけに還元されるものではないけれど、資金が回収できないとなれば、「なんでもいいから」出さなきゃいけないという状況は生まれてしまう。その結果はどうだ。鏡より、ユーザーの方がよく知っているだろう。
 ユーザーのニーズ。
 それは大手の真似をするための詭弁である。
 ボリュームを求めるユーザーがいないとは、鏡も言わない。ボリュームを求めているユーザーはいる。しかし、彼らは「なんでもいい」からボリュームを欲しがっているわけではないのだ。ただ「いい作品には長い間浸かっていたい」だけなのである。それは、昔も今も変わらない。最近になって現れたことではない。
 エロゲーバブルが崩壊し、1タイトルあたりの売り上げが低下していったとき、経営者や作り手たちが飛びついたのが、「ボリューム」という非常にわかやりすい指標だった。ボリュームをあげるのは、比較的簡単なアピールに思えたのだろう。ボリューム不足では、他社商品に負けてしまう、という間違った怯えもあっただろう。
 結果、かえって自らの資金状況を悪化させる方向へと誘導し、さらにまともなものづくりまで厳しい状況に自らを導いてしまった。
 これを自業自得と言わずして何と言おうか。ユーザーのニーズに答えた結果のようで、実はユーザーのニーズを裏切る方向に進んでいるのである。だから、鏡はボリューム・インフレーションに対して何度も声をあげるのだ。あらゆる価格帯において、ボリューム・インフレーションをやめよ、と。
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COMMENT

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一つの文脈としての「月姫」
KM | URL | 2006-07-22-Sat 20:33 [EDIT]
一つの文脈として、月姫というのもあった可能性があります。
あれも「同人でありながら大容量」という触れ込み、およびコンセンサスで成立したビジネスモデルですし。
そして、同人を侮っていた商業の人たちはあせってそういう大容量(出資している銀行等がせっついている可能性がありますが)に拍車が掛かったところも見受けられると思いますがいかがでしょうか?
お金周り
Asky | URL | 2006-07-23-Sun 16:08 [EDIT]
>>#Zr2/WiYYさん
出資しているのは銀行ではなく第一に流通業者(問屋)次いでVisualArt'sのような一部のメーカー(?)です。銀行はとてもお金を出してはくれません。
最近、ボイス入りが当たり前になりましたのでそういう声優や音関連(事務所)のコネクション持った所(問屋)の勢いは目覚しいものがあります。
問屋連中も同人は同人と月姫出る前から割り切っているので月姫でたからといってせっついたりしません。どちらかというと問屋からのコミットが強い(こうすれば売れますよ・こうしないと売れませんよetc)のでは?
同人のメリット
Ryu | URL | 2006-07-23-Sun 23:09 [EDIT]
同人の場合は人件費において、かなりの部分でボランティア的な部分がありますから、商業と違って開発期間に縛られないと言うメリットがあるんじゃないですかね(勿論有名サークルになってプロの声優を使えるような所は別でしょうが)
「同人でありながら大容量」と言うよりは「同人だから大容量に出来た」側面はあるでしょう。

商業的にはリリスみたいに安価・小ボリュームの商品を短いサイクルでリリースし続ける方が大ヒットは無くても堅実な経営が出来そうな気がします。(リリスが堅実な経営かどうかは知りませんが)
管理人のみ閲覧できます
| | 2006-07-24-Mon 11:29 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
全ては天のみが知っている?
えけれけ | URL | 2006-07-26-Wed 20:20 [EDIT]
私も業界でライターとして働いているものですが、テキストが大容量になっているのは、ゲームの価格も大きいでしょう。

アダルトのみを重視するならば、リリスのようなゲームでいいわけですが、ユーザーが「ストーリーの中で、仲良くなっていく」とか、痴漢ゲームでも、シチュエーションなどを重視する、となると、テキストが膨らみます。

キャラ数を減らす、となれば一人当たりのボリュームが少なくても、ボリュームは減ることになりますが、8800円のゲームで数時間で終わってしまえば、ユーザーも不満を抱きますし、マイナーな市場のため、値段も下げられない、という、
ある意味苦肉の策ではないでしょうか。

もっと極端に言えば、アダルトだけを楽しみたいなら、ピンクパイナップルのようなビデオを見るわけであって、エロゲーはブームに乗じて生まれた、異端的存在のような気もします。

私の結論を言うと、

「何が正しいのか、どこでバランスを取るべきなのか、はっきり言って、読み切れない」

という所です。

時の流れを待つしか、その正解を知ることはできないのではないかと思います。

鏡仙人 | URL | 2006-07-26-Wed 20:31 [EDIT]
 理由は価格にあらず。
 DOS時代から、エロゲーの価格は変わっとりません。あの頃は、ほとんどフルプライス領域しかなかったですよ。

 テキストが昔に比べて大容量化していることに関して、価格は全然関係ありません。

えけれけ | URL | 2006-07-26-Wed 21:06 [EDIT]
すいません、知識不足が相まって、言葉が足りませんでした。

ユーザーの認識からして、あの手の短いゲームに8800円を払うのは馬鹿らしい、という、価値観の相違、などの要素を考えるべきでしたね。

失礼いたしました。

鏡仙人 | URL | 2006-07-26-Wed 21:22 [EDIT]
 価値観の相違もまた関係ありません。
 
 2000年以前は、8800円でもそれほどシナリオやCGにボリュームがあったわけではありません。馬鹿らしいと思いながら買っているユーザーさんもいたはずです。でも、ボリュームを求める声はいまほど大きくはなかった。そこが重要なんです。

NON | URL | 2006-07-27-Thu 00:40 [EDIT]
はじめてコメントします。

一ユーザの意見としては、ボリュームを基準にソフトを選んだことなんかありませんね。ブランド、原画家、シナリオライタ、音楽、声優、テーマなど選択基準は色々あるけど何かこれはという光モノがないと選びません。
最近、何度も繰り返しプレイしたいと思うゲームがほとんどないというのもクオリティが低下していることのあらわれですかね。
たとえプレイ時間が2時間程度でもプレイ後に満足感があれば足りないとは感じないと思います。逆に何十時間とかかっても満足感がなければ物足りなさが残ります。この物足りなさがボリュームを求めていると勘違いされているのではないでしょうか。

Ryu | URL | 2006-07-27-Thu 01:35 [EDIT]
そもそも本当に大多数のユーザーはボリュームを求めてるんでしょうかね?

大風呂敷を広げた挙句にボリュームを拡大した結果、分割販売する羽目になることはむしろユーザーが嫌うところではないかと思います。

結局の所、ユーザーは出した金に見合う体験をしたいだけであって、それはなにもボリュームだけの問題じゃなくて、短くても対価に見合う質があれば満足はするでしょう。

安くて大味な肉をたらふく食うのか、幾分高価でも美味しい肉を程々に食べるのか、トータルとして同じ金額を支払うとして、どっちを選ぶか。

食べ盛りの若い人なら前者でしょうし、幾分年を重ねた人なら後者を選ぶでしょう。

それと最近のゲームのプレイスタイルが、基本的に繰り返し遊ぶものでは無くなって来ているのではないかと考えています。購入したゲームは1度遊んだら(コンプリートしたら?)お終いで後で引っ張りだしてまた遊ぶ、ということをしなくなってきているのでは無いか、と思うことが最近良くあります。

一度しか遊ばないから、満足感を得るためにはボリュームが欲しい。

そう言う意識が根底にあるんじゃないかと。

カオスエンジェルスとかドラゴンナイトとか繰り返しプレイしていたオッサンゲーマーだからそう感じるだけかもしれませんが。

鏡仙人 | URL | 2006-07-27-Thu 07:21 [EDIT]
●NONさん

おれも、ボリュームが基準だとは書いとりません。
 ボリュームを「積極的に」求めているのではなく、ボリュームがないとブーイングするようになっている、ということです。
 DOSの頃にはボリューム不足という声は大きくなかったのに、『Air』-『君が望む永遠』以降、「ボリューム不足!」とユーザーがブーイングする声が大きくなった、ということです。

●Ryuさん

別途、記事として書きました。

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