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『アンチ・オイディプス』と『資本論』
 鏡です。
 締め切り前なのに、なぜか『アンチ・オイディプス』を読んでいます。ぼくは現代思想が趣味なのです(笑)。非常に悪趣味です。
 『アンチ・オイディプス』には、河出書房版(市倉訳)と河出文庫版(宇野訳)の2つがあります。河出書房版は単行本サイズでかなり分厚いです。

 対して河出書文庫は最近出版されたもので、哲学的初心者には読みやすいです。

 『アンチ・オイディプス』は、用語が非常に独特です。
 たとえば、欲望。
 欲望というと、一般的には欠如から引き起こされるものとされています。「自分にはないから欲望する」という図式です。でも、著者のドゥルーズとガタリは、欲望は欠如じゃないんだ、ただそこにあるんだ、と言っています。
 それから、生産について。
 一般的には、自然と産業は区別されています。自然と人間も、自然と社会も区別されています。そして、生産すること、それからその生産物を分配すること、分配したものを消費することという、「生産」「分配」「消費」の3つは別々のものとして区分されています。でも、ドゥルーズとガタリは、そういう区分は無効で、みんな生産なんだ、ということを言っています。
 さらに、機械について。
 食べる機械、話す機械、呼吸する機械、肛門機械――いろんな機械と機械がくっついてできあがったものが、人間なんだ、と『アンチ・オイディプス』は言っています。機械Aと機械Bが接続すると、機械Aの流れを、機械Bが切断することになります。しかし、同時に機械Bは新たな流れをつくりだすことになります。
 機械と機械が接続されると、切断と同時に流れが生まれる。そうした無数の切断と流れの中に人間がある。そして、それは人間単体に限らない。人間という機械は、自然という機械にも接続しているんだ。そう『アンチ・オイディプス』は言っています。読み進めていくと、大地機械なんて言い方も出てきます。また欲望機械というのは、実は社会のことだったりして、ガタリとドゥルーズにとっては、社会も自然も機械、人間も諸機械です。みんなみんな機械で、機械と機械がつながっているんですね。
 そういったいろんな機械と接続しまくっている姿――それが人間です。こうなっちゃうと、もうどこに中心点があるのかわからなくなってしまいますね。それを突き詰めていくと、器官なき身体になっちゃうんだろうと思います。
 『アンチ・オイディプス』は、特に精神分析批判が凄いですよね。
 たとえば、ある小さい子を精神分析しようとするとき。子供に汽車の玩具を与えるけど興味を示してくれない。そこで大きな汽車と小さな汽車を並べて「大きな汽車がパパ」「小さな汽車がぼくちゃん」と名付けています。さらに窓のところまで汽車を走らせて「ここは駅ね。駅はママよ」と名付けています。
 『アンチ・オイディプス』では、大きな汽車も小さな汽車も、そして駅も、人間という諸機械に接続する機械なんだ、と言っています。それだけであって、それ以上じゃない。なのに、無理矢理「パパ-ママ-子」という全体性に引き寄せて解釈しようとしちゃっている。欲望機械を無視している、と言って『アンチ・オイディプス』は激しく精神分析を非難していますね。
 『アンチ・オイディプス』を読んだら、『資本論』を読み直してみようかなと思っています。

『資本論』については、過去に岩波書店版に挑んだことがありますが、訳が悪すぎて意味がつかめず、挫折しました。筑摩書房版で完読しました。関係代名詞whichを「~するところの」と訳す古い英文解釈ではなく、新しい英文解釈技術に基づいた翻訳で、非常に明晰です。
 ぼくは『資本論』を読んで、「貨幣ってのは物々交換の道具の1つなんだよ、それがたまたま汎用性を持っちゃって特殊なポジションを占めるようになっちゃったものが貨幣なんだよ」というのを理屈で必死になって説明しているという感じを受けました。
 ちなみにぼくは左翼ではありません(笑)。『資本論』はむしろ貨幣論みたいなところがあるので、読んだからといって左翼になるような書物ではありません。
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